堤防の破壊


   

 土と水の相互関係を考えることは土だけ、水だけで考えるよりも難しいと書きましたが、どうして難しいかということはあまりよくわからないかもしれません。

 そこで私たちの生活で身近なもので土と水が関係している堤防について考えてみましょう。堤防がとても頑丈なら大雨が降っても安全だと考える方が多いかもしれません。

 

 しかし、実はそうではありません。

 

 下の図のような、大雨が降った時の堤防の様子を考えてみます。

 

 ここに用意したのは、上の絵のように大雨により川が増水したということを想定した実験装置です。画面向かって左側は河川側、右側は私たちが住む側です。中央の仕切りは、水を通さず、十分な高さを持った堤防だと考えて下さい。

 さて、この模型の河川側に水を入れ、水位を上昇させてみましょう。

 

 堤防はとても頑丈で安全そうなはずなのに、私たちの住む側が水に沈んでしまいました。

動画内では堤防は壊れずその下の土が湧き上がり、水が入ってきています。

つまり、いくら堤防を高く頑丈にしたところで、川の水位が高くなった時、堤防そのものではなく、その下の土が壊れることがあるということです。

 

 この現象は、河川側の水位が高くなることによって起こっています。

 簡単に言うと左側の水位が右側より高くなっている分の水の重さで堤防の下の土が押し出されてしまったことが、この現象の原因です。

よく見てもらうと分かりますが、その現象が起きる前に矢板の左側の土がどんどん掘られてゆき、右側の土が少し盛り上がってきています。これが、土が水によって押し出されているということです。

 このように土が水によって噴き上がる現象を「浸透破壊」と呼び、堤防決壊の原因の一つです。

 

 この現象は堤防だけではなく、ダムや水辺での工事現場でも起きることがあるため、その対策を立てる必要があります。

 そして、現象のメカニズムを解明することができれば、その現象への対策がより効果的で効率のよいものとすることができます。